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※短編集なので作品抜粋

『日々移動する肝臓のかたちをした石』
かなり共感してしまったので後ろの方の作品だけど先に書き留めておきたくなった。
恋とか愛とかが実を伴わないかたちでふくらむとやがてそれはただの執着に変わっていて、それに気がついて捨てようとするんだけどなかなか捨てられず、ひきちぎれるくらいの思いをして断ち切ろうとしても過去はやっぱり自分の一部でひょっこりと毎日顔を出してくる。肝臓のかたちをした石は多分、消えたのではなくて彼女の心の中に入っていったのだろうと私は思う。時間が経つと執着は薄らいでやがて、思い出に変わる。その石がなにであったか、「執着」であったと語れるようになる。時間が与える変化はゆっくりとしたスピードで意識したときに愛は執着に、執着は思い出に変わっている。
執着をすてた瞬間って確かにすっごい軽くなった感じがするんだけど、しばらくは油断するとひょっこり顔を出すんだよね。ホント。思い出に変わったって気がついた瞬間は執着の意味すら忘れてるわ。

相手とコミュニケーションをとる中で一緒に育てていった絆は恋とか愛とかがなくなっても多分ずっと続くけれど、ここに登場する彼女(もしくは筆者の彼)の場合、そうではなかった。人との深い関係を避けていたからそれなりのツケがまわってきているとも言える。「肝臓」より大事なのは「明瞭な輪郭を持ち、手応えをそなえた、奥行きの深い感情」。

「大事なのは誰か一人をそっくり受容しようという気持ちなんだ」

なんだかものすごく言い当てられた感がある短編でした。

 

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